2015年11月29日京都8Rでキングノヨアケに騎乗して勝利した武豊は落馬復帰以降初、2009年以来6年ぶりの年間100勝を達成。武豊は、
「久しぶりなので、よかったです。年間100勝は自分の中で目標のひとつだったので、クリアできたことは嬉しく思います。今年はケガもなく順調にここまで乗れてきていると思いますし、多くの方に応援していただいてよかったです。岩田騎手より早く100勝しようと思っていたので(笑)。100勝を意識するというよりも、実はこの馬の厩務員さんが定年で、これが最後のレースだと聞いていたので、そっちの方がプレッシャーでした。厩務員さんに対しても本当によかったと思います。この数字はもう少し早く達成したかったですが、まだ今年もあと1ヶ月残っていますし、もっともっといいレースをして、もっと勝ちたいと思っていますので、応援してください。ありがとうございました」(競馬実況web)
というように、「岩田騎手より早く100勝しようと思っていた」ということは置いといて(笑)、年間100勝することは武豊の目標だったようだ。ということで、ザタイキの毎日杯で落馬負傷した武豊の、落馬以降の成績を主観を交えながら振り返ってみることにした。
武豊過去6年間の騎乗成績
武豊落馬前後の勝利数※11月29日現在 | |
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2009年 | 140勝(2位) |
2010年 | 69勝(14位) |
2011年 | 64勝(16位) |
2012年 | 56勝(19位) |
2013年 | 97勝(8位) |
2014年 | 86勝(8位) |
2015年 | 100勝(5位) |
こうやって振り返ってみると、2013年を境に一気に武豊の成績が上向いてきていることがわかる。そこで、2010年から武豊の成績やお手馬を見ながら振り返りたいと思う。
2010年の武豊
2010年の武豊騎乗成績 | |
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69勝(14位) | 重賞6勝(G11勝) |
2010年の武豊の主なお手馬 | |
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2歳馬 | ダノンバラード、リフトザウイングス、トーセンラー、コティリオン |
牡馬クラシック | ヴィクトワールピサ、ローズキングダム |
牝馬クラシック | アプリコットフィズ |
古馬王道 | ローズキングダム |
マイル | なし |
スプリント | なし |
ダート | ヴァ―ミリアン、スマートファルコン |
2010年の武豊重賞勝利 | |
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ダイヤモンドS | フォゲッタブル |
弥生賞 | ヴィクトワールピサ |
クイーンS | アプリコットフィズ |
神戸新聞杯 | ローズキングダム |
ジャパンC | ローズキングダム |
ラジオNIKKEI杯 | ダノンバラード |
騎乗数が少ないので69勝と勝ち鞍は少ないが、勝率もそこそこで、アプリコットフィズで復帰後初の重賞勝利。そしてリフトザウイングス、トーセンラー、コティリオンの2歳馬の騎乗で狂喜していたこと、ローズキングダムの神戸新聞杯でのエイシンフラッシュとの一騎打ちが印象深かった。
このように復帰以後もローズキングダムに騎乗したり、ヴィクトワールピサの凱旋門賞に騎乗したりと、この年以降まさかとんでもないことになるとは予想していなかった。
2011年の武豊
2011年の武豊騎乗成績 | |
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64勝(16位) | 重賞6勝(G10勝) |
2011年の武豊主なお手馬 | |
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2歳馬 | サウンドオブハート |
牡馬クラシック | ダノンバラード |
牝馬クラシック | なし |
古馬王道 | ナリタクリスタル、トレイルブレイザー |
マイル | クレバートウショウ |
スプリント | なし |
ダート | スマートファルコン、ラヴェリータ |
2011年の武豊重賞勝利 | |
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アーリントンC | ノーザンリバー |
中京記念 | ナリタクリスタル |
京都新聞杯 | クレスコグランド |
レパードS | ボレアス |
新潟記念 | ナリタクリスタル |
シリウスS | ヤマニンキングリ― |
前年は落馬で騎乗数が少なかったため69勝は仕方ないと思っていたが、2011年はまさかの前年を下回る64勝。
ナリタクリスタルが頑張ってくれたが、G1では少し足りずG1連続勝利年数が途切れることになった。けれど地方交流重賞でスマートファルコンの大活躍のお蔭で、武豊の存在感は成績以上にあったと思う。
2012年の武豊
2012年の武豊騎乗成績 | |
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56勝(19位) | 重賞3勝(G11勝) |
2012年の武豊主なお手馬 | |
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2歳馬 | ティーハーフ |
牡馬クラシック | なし |
牝馬クラシック | メイショウスザンナ |
古馬王道 | ローズキングダム、トレイルブレイザー |
マイル | サダムパテック |
スプリント | エピセアローム |
ダート | スマートファルコン、エスポワールシチー |
2012年の武豊重賞勝利 | |
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京都記念 | トレイルブレイザー |
セントウルS | エピセアローム |
マイルCS | サダムパテック |
2012年は56勝とさらに前年を下回る勝ち鞍。それだけでなく重賞も3勝ともはや武豊とも思えないような成績に。
それでも、トレイルブレイザーに騎乗して京都記念でダークシャドウ、ヒルノダムール、ウインバリアシオンを完封し、「豊マジック」と見出しに書かれ、BCターフも好走、サダムパテックで復活のマイルCS勝利という見所はあった。
この2年2歳新馬の騎乗数が極端に減少。新馬に騎乗できるだけで喜んでいた2年だった記憶がある。
2013年の武豊
2013年の武豊騎乗成績 | |
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97勝(8位) | 重賞11勝(G12勝)※海外1勝 |
2013年の武豊主なお手馬 | |
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2歳馬 | ベルカント、トーセンスターダム |
牡馬クラシック | キズナ |
牝馬クラシック | クロフネサプライズ、スマートレイヤー |
古馬王道 | トーセンラー、トウケイヘイロー |
マイル | トーセンラー |
スプリント | エピセアローム |
ダート | ワンダーアキュート |
2013年の武豊重賞勝利 | |
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京都記念 | トーセンラー |
チューリップ賞 | クロフネサプライズ |
毎日杯 | キズナ |
京都新聞杯 | キズナ |
ダービー | キズナ |
鳴尾記念 | トウケイヘイロー |
函館記念 | トウケイヘイロー |
小倉記念 | メイショウナルト |
札幌記念 | トウケイヘイロー |
ニエル賞 | キズナ |
ファンタジーS | ベルカント |
マイルCS | トーセンラー |
前年56勝、重賞3勝とおよそ武豊とは思えない成績に終わってしまったが、2013年は上半期はトーセンラーが京都記念を勝ち、天皇賞春2着、そしてキズナのダービー制覇で武豊復活を印象付けたと思う。
そして下半期は国内ではイマイチで終わってしまったが、ニエル賞では英ダービー馬ルーラーオブザワールドを退け、キズナを世界一のダービー馬に導き、凱旋門賞も4着と好走。香港Cに出走したトウケイヘイローも2着と海外では好レースが続いたと思う。
クラシックではイマイチに終わってしまったが、2歳馬もベルカント、トーセンスターダムと期待の馬が揃い、97勝、重賞11勝と武豊完全復活へ一気にのろしを上げたと思う。
2014年の武豊
2014年の武豊騎乗成績 | |
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86勝(8位) | 重賞7勝(G10勝) |
2014年の武豊主なお手馬 | |
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2歳馬 | トーセンビクトリー、ティルナノーグ |
牡馬クラシック | トーセンスターダム |
牝馬クラシック | ベルカント |
古馬王道 | キズナ、ヒットザターゲット |
マイル | トーセンラー |
スプリント | なし |
ダート | ワンダーアキュート |
2014年の武豊重賞勝利 | |
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きさらぎ賞 | トーセンスターダム |
Fレビュー | ベルカント |
大阪杯 | キズナ |
阪神牝馬S | スマートレイヤー |
毎日王冠 | エアソミュール |
武蔵野S | ワイドバッハ |
チャレンジC | トーセンスターダム |
2013年の活躍から、2014年に年間100勝を達成できると思っていたし、キズナで王道路線も席巻するかと思っていたが、キズナは戦前離脱、ベルカント、トーセンスターダムもクラシックでは活躍することが出来ず、G1は未勝利に終わる。
良い馬に巡り合えなかったかもしれないが、この数年では信じられないような数の新馬の騎乗依頼があり、年末にはコパノリッキー、コパノリチャードと立て続けに騎乗依頼があり、2015年に向け楽しみが広がっていった。
2015年の武豊
2015年の武豊騎乗成績(※11月29日現在) | |
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100勝(5位) | 重賞10勝(G11勝)※海外1勝 |
2015年の武豊主なお手馬 | |
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2歳馬 | エアスピネル、ラルク、スマートオーディン、ドレッドノータス、スマートシャレード、ラニ、ロイカバード、ポルトフォイユ |
牡馬クラシック | ポルトドートウィユ |
牝馬クラシック | トーセンビクトリー |
古馬王道 | キズナ、エイシンヒカリ |
マイル | なし |
スプリント | コパノリチャード、ベルカント |
ダート | コパノリッキー、アウォーディー |
2015年の武豊重賞勝利 | |
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シンザン記念 | グアンチャーレ |
東海S | ベルカント |
フェブラリーS | コパノリッキー |
エプソムC | エイシンヒカリ |
北九州記念 | ベルカント |
シリウスS | アウォーディー |
毎日王冠 | エイシンヒカリ |
デイリー杯2歳S | エアスピネル |
東スポ杯 | スマートオーディン |
京都2歳S | ドレッドノータス |
香港C | エイシンヒカリ |
2015年はコパノリッキーでフェブラリーS制覇と幸先の良いスタートだったが、復活を期したキズナが大阪杯で苦杯をなめ、天皇賞春でまたもや戦前離脱。
けれど、秋競馬は王道路線でキズナ、2歳馬にはポルトフォイユ、スプリント路線にはベルカント、ダート路線ではコパノリリッキーと、秋競馬を席巻するようなお手馬のラインナップ。
そんなわけで秋競馬の武豊を非常に楽しみにしていたところ、キズナとポルトフォイユの横綱2頭が屈腱炎、秋競馬の楽しみが一気になくなったかと思いもした。
エアスピネル、スマートオーディン、ドレッドノータスで3週連続2歳重賞制覇。この3頭以外にもラルクにスマートシャレード、ラニ、ロイカバードと武豊の全盛期を彷彿とさせるような2歳馬のラインナップ。
秋競馬は2歳馬の活躍もあり、11月29日キングノヨアケで落馬復帰以後初の年間100勝を達成。そしてエイシンヒカリで8年ぶりの海外G1制覇。武豊の完全復活というにはまだ早い気がするが、今年の2歳馬のラインナップを考えると、来年は本当に「キングの夜明け」になり、クラシックを席巻し、リーディング争いに加わってくるかもしれない。
武豊の落馬復帰以後を振り返るとやはり
このように振り返ると、怪我がやっと感知してきたこともあると思うが、どん底の2012年から、重賞11勝&ダービー制覇の2013年への飛躍はノースヒルズにスマートの大川オーナー、メイショウの松本オーナーなどの個人馬主や、小島太厩舎等懇意の厩舎の支援が非常に大きかったと思う。
特に武豊に騎乗馬が集まらない時期は騎乗馬が小島太厩舎の馬ばかりだった時期もある。そして、スマートファルン(大川オーナー)で成績以上に存在感があり、どん底ながらもトレイルブレイザー(ノースヒルズ)での頑張りが飛躍へつながったのではないだろうかというきがする。